抑えきれない怒りの感情をエネルギーに変える7ステップ
理不尽なことを言われた時、
まったく話が通じない時、
なぜこんなに怒れるのでしょうか?
自分がわがままなだけなのか?
我慢が足りないのか?
と自分を責めることもありますし、
「自分が正しいことを証明したい」
「相手の間違いを分からせたい」
「仕返ししたい」
「倍返しだ」
と反撃したい気持ちもあります。
『半沢直樹』が爽快なのは、それが現実世界では起こりえない「ファンタジー」だからです。
自分の正しさは証明されず、相手の間違いは理解されることなく、『倍返し』しようとすれば倍のしっぺ返しをくらうだけです。
怒りという感情は、相手にぶつけても社会生活を壊し、自分にぶつけても自分の精神を壊す、非常にやっかいな存在です。
どうしたら怒りを処理できるのか、色々考えました。
どのように怒りに対処するべきか、私なりの方法をシェアしたいと思います。
1. 怒りのメカニズム
まずなぜ怒りが発生するのか、そのメカニズムを理解する必要があります。
心理学的に怒りのメカニズムは罪悪感と似ています。
罪悪感を感じるのは自分の中のルールに自分自身が違反してしまった時です。
怒りを感じる時は自分のルールに相手が違反した時です。
たとえば「なんでこいつは分からないんだ!!」と怒りが沸く時がありませんか?
それは自分の中の常識や論理的思考という会話のルールに、相手が無意識のうちに違反しているからです。
文化が違うからです。考え方が違うからです。そもそもやっているゲームが違うんです。
だから、相手に悪意があるわけではありません。もちろん自分が悪いわけでもありません。
例えば自分がサッカーをやっているつもりで、脚でボールを蹴っていたら、相手が突然ボールを手でつかんでゴールに向かって走り出したらめちゃくちゃムカつくと思います。
自分はサッカーのルール、相手はラグビーのルールでゲームをやっているわけです。
そして残念なことに、相手はサッカーを知らないんです。
サッカーを知らない相手に、サッカーをしてもらうことは不可能です。
つまり絶対にわかり合えないということです。
だからまず相手に分からせるという努力を放棄しないといけません。
もしその相手とこれから一生一緒に暮らすのであれば別ですが、途方もない時間と労力をかけない限り、相手にあなたのルールを理解させることはできません。
自分のルールを理解してほしいと期待するほど、失望は深くなり、怒りは強くなってしまいます。
友達だったらどうするか?と思うかも知れませんが、まず致命的にルールが違う人間とは友達関係になりにくいのです。
ルールが違う=コミュニケーションが成立しないということだからです。
「自分と違う人間に惹かれる」というのはきれいごと、つまり嘘です。心理学では私たちは「自分と似た人間に惹かれる」ことが多くの実験で証明されています。
ルールが違う人間同士であればどうせ生涯の友にはならないですし、ルールが違う会社であればどうせ出世はできません。出世したければ転職したほうがよいでしょう。
安心してコミュニケーションを諦めましょう。
2. 基本的に言葉は通じない
脳科学者の中野信子さんが、「頭の悪い人と話す時はどんな気分ですか?」と聞かれたときの答えが
「自転車をゆっくり漕ぐのは逆に難しい。それと同じです。」
日本人同士で日本語で会話するとき、ついつい話が通じて当たり前、と考えてしまいます。たしかに『ハンバーガーひとつください」といった簡単な言葉であればほぼ100%通じます。
ところが、少し複雑な会話になってくると100%の意図が通じることはほとんどありません。
学生の頃、国語のテストで「花子は○○と言ったが、○○とは何のことか?」といった問題がありましたよね?
日本語として答えが決まっている問題です。それなのにセンター試験などでも正答率は60%前後です。
日本語で『意図』を質問されているのに、平均で60%くらいしか通じていないのです。
そこに色々な常識や立場といったノイズが混ざるので、普通は半分以下しか通じないと思ったほうがよいです。
相手が間違うこともあれば、自分が間違うこともあります。
もし自分が「理解されていない」と感じるのであれば、おそらく自分の言葉を相手が理解できていません。
「この人と話すといつも怒りが沸いてくる」という場合、自分とは言葉が通じない相手だと考えたほうがよいです。
3. 怒りは無理に抑えてはいけない
私たちが怒りを感じているとき、脳内ではアドレナリンが大量に分泌されています。アドレナリンは闘争のホルモンなので、私たちの体内では攻撃性が高まっています。アクセル全開なのです。
ところが、私たちは道徳上、怒るのは良くない、怒ってもしょうがないと教え込まれているので、怒りを抑え込もうとしてしまいます。
怒りを抑え込もうとすると、体内ではアクセルを全力で踏みながら、同時にブレーキを踏むような状態です。
そんなことをすれば車も壊れてしまいますし、強烈にストレスがかかるので、繰り返せば私たちの心も壊れてしまいます。
社会生活上、怒りを前面に出してはいけない時もありますが、一時的には我慢できても、間違いなく体と心は疲弊します。
物理的に怒りを発散するには、大声を出す、全速力で走る、ひたすら愚痴る、などがあります。理想的ではありませんが、それでも無理に抑え込むよりずっとマシです。
4. 怒りの対象を大きな目標と比較する
雄大な大自然の中では人間がちっぽけな存在に見えるように、目の前の状況も、より大きな存在と比較すればちっぽけな存在でしかありません。
6畳一間の中に粗大ゴミがあれば、目障りでしょうがないと思いますが、100畳の部屋の中に粗大ゴミがあっても、それほど気にならないでしょう。
心を広く持ちましょう、と言われても簡単にできることではありませんが、比較対象を大きくするだけで、目の前の問題は小さなことに思えてきます。
私のオススメは自分の大きな目標について考えたり、5年10年先の未来について考えることです。
昨日、今日、明日のトラブルなど5年後の未来にたいした影響はありません。多少人間関係に問題があっても、自分の長期的な目標を達成する上ではそれほど悪影響はありません。どうでもいいことです。
5. 自分の得意分野が分かる
自分を見つめるといっても、「なぜ自分は怒りっぽいのか?」と考えるのではありません。
怒り=相手のルール違反なので、自分の大切にしているルールや価値観を見つめる機会になるのです。
例えば私は英語が得意なので、自分より英語ができない学校の英語の先生が、「こうやって英語を勉強すると良い」と間違った知識を生徒に教えているのを見ると腹が立ちます。
運転が得意な人は、めちゃくちゃな運転をしているドライバーを見ると腹が立つと思います。(私も運転が下手くそです。すいません)
つまり、怒りは自分が本当に好きなことや得意なことをはっきり認識する機会にもなります。単に自分が好き、得意と思っているだけでなく、怒りを感じるということは、自分がその分野において人より優れていることの証明でもあるのです。
6. 言葉の表現方法を変えると心が整理される
「コップに半分しか水がない」
「コップにまだ半分も水がある」
同じ状況でも、言葉の並べ方でまったく印象が違いますよね?
怒りの感情も表現方法を変えるだけで、ずいぶんとスッキリとさせることができます。
例えばイライラが収まらない時、自分の頭の中で、『議論』をしていませんか?
「なんでこんなことを言われなくちゃいけないんだろう?」
「自分が正しいはずなのになぜ分かってくれないんだろう?」
その議論のだいたい結論はこんな感じです。
「どう考えても自分は正しい、それなのに状況は変わらない、あ~超ムカつく!」
このような止まらないムカつきをイメージで考えると、
自分は正しい、自分は正しい・・・とスピードが50㎞、100㎞と上がっていって、最後に「状況は変わらない」という壁に正面衝突しているんです。
「正しい自分」が「変わらない状況」という壁にぶつかっているのです。壁にぶつかった衝撃がムカつくという感情です。
試しにちょっと言葉の順序を入れ替えてみましょう。できれば声に出して読んで見て下さい。
「状況は変わらない、それでも自分は正しい。」
どうでしょうか?かなりスッキリしませんか?
「変わらない状況」という止まった状態から、ゆっくりとですが確実に前進している感覚が得られると思います。
私はこのセリフを何度も声に出すようにしています。
「上司は変わらないだろう。でも私は正しい。」
「会社は変わらないだろう。でも私は正しい。」
何度か声に出していると、不思議と前向きな言葉が続くようになります。
「上司は変わらない。でも私は正しい。とにかく自分の仕事をやろう。」
「会社は変わらない。でも私は正しい。とにかく目標に向かって進もう。」
7. 怒りをエネルギーに変換する方法
もっとも理想的な怒りの処理方法は、怒りのエネルギーを行動エネルギーに転換することです。
怒りもエネルギーの一種なので、エネルギーの向かう方向性を変えてあげれば、爆発的なパワーを生み出すこともできます。
怒りの感情も使いようによっては、私たちの力になるのです。
実際、成功者には極度の負けず嫌いが多いです。特に貧乏から成り上がったタイプの人は自分をバカにした奴らを見返してやる、という気持ちをモチベーションにしてきた人ばかりです。
車のガソリンも、ただ火をつければ爆発するだけですが、うまくエンジンを回せば高速の移動手段になります。
怒りは爆発力を持ったエネルギーです。もしあなたが怒りっぽいタイプであれば、それだけ爆発的な行動力を生み出す才能があるのです。
怒りの感情のコントロールとは、怒りを抑え込むことではなく、怒りのエネルギーを転換することなのです。
昔、運転免許の教習所で教官から言われた言葉で、今も覚えている言葉があります。
「自分の行きたい方向を見ろ」
障害物に意識を集中すれば、障害物にぶつかってしまいます。
障害物を通り抜ける「ルート」に意識を集中すれば、そのルート通りに進めます。
車だけでなく、セスナやジェット機など、色々な乗り物の運転で重要なのが、避けたい障害物ではなく、行きたい方向に意識を集中することなんです。
運転中に障害物が現れたときに、「右を通ろうか?左を通ろうか?」と瞬間的に考えますよね?
「どうやったら障害物をどかせるか?」とは考えないと思います。
もし同じように怒りの感情に対処することができれば、嫌なことが怒っても、無駄な時間やエネルギーを使うことなく、スムーズに進むことができるはずです。
どうすれば自分の進む方向=自分の思考をコントロールできるのか?
車は目線でコントロールすると言われますが、私たちの思考は『質問』でコントロールできます。
「この怒りを解消するには?」
とストレートに考えると、仕返しや相手と戦うといった反撃方法しか頭に浮かびません。
「怒りを抑えるには?」
と考えても、「自分も悪い」「わがままだった」などと、自己否定を繰り返すだけでストレスが溜まってしまいます。
「この怒りをエネルギーに変えるには?」
と考えれば、怒りを生産的なエネルギーに変える方法が見つかります。
「この怒りをエネルギーに変えるには?」
⇒「ブログの記事にすればいい」
そうやって今日、私はこの記事を書きました。