上手に褒める方法|子供や部下のやる気を引き出す6つのコツ
「勉強が好きな子供」や「仕事のできる部下」は必ず褒められて伸びています。
私たちは本能的に快楽を求め、痛みを避けるようにできています。誰にとっても褒められることは快楽ですし、注意されたり叱られるのは痛みです。
勉強で褒められた人は、勉強が好きになり、仕事で褒められた人は仕事が好きなるのは自然の摂理なんです。
脳内では、勉強すること、仕事することでドーパミンが分泌されるようになります。
その結果、もっと勉強したい、もっと良い仕事をしたい、という動機付けが子供や部下の中に生まれるのです。
もちろん、人は楽をしたがる生き物なので、怠けている時に注意されたり叱られることも必要です。私自身も超がつくほどの怠け者なので、誰にも注意されない環境ではダラダラしてしまいます。
だからといって、注意されることや叱られることで、勉強や仕事が好きになることはありません。
長い目で見て、子供や部下を伸ばすためには、絶対的に褒めることが必要です。
「どうやって褒めたらいいか分からない」
たしかに褒め方は難しいです。誰が見ても素晴らしい結果であればいいのですが、滅多にそんなチャンスはありません。
そこで、子供や部下を褒める時のコツをシェアしたいと思います。
1. すぐ褒める
子供や部下が何か良いことをしたら、すぐに褒めるように意識しましょう。
部下が良い仕事をしたら、可能であれその場で褒めてあげるのが大事です。例えば子供がテストで良い点をとったら、一刻も早く、必ずその日に褒めてあげる。
すぐに褒めることで何が起こるのか?
褒められることは誰にとっても気持ちよいことです。
私たちの脳は『同時』に起こった2つのことを結びつける性質があるので、良い仕事をすること=褒められること(気持ちいいこと)が感情的に結び尽きます。
あまり時間が経つと、ただ褒められて気分が良かった、で終わってしまいます。
家庭教師や個別指導塾が効果を上げやすい理由のひとつは細かく褒めることができるからです。
問題が1問解けたら「すごい!よくできたね!」と、その瞬間に褒めることができるからです。何十人もいるクラスだと中々こうはできません。そうやって褒められると、子供は問題を解くこと自体が楽しくなってきます。つまり勉強が好きになってしまうんです。
もちろん親が常に子供の勉強を見ることはできないですし、上司も部下につきっきりにはなれないと思いますが、少しでも早く褒めることを常に意識しておきましょう。
2. 人そのものを褒める
あなたが宝くじに当たったことを褒められても、それほどうれしくないと思います。
もちろん当たったこと自体はうれしいと思いますが、同じ1億円でも、「宝くじで1億円当たった人」よりも「仕事で1億円稼いだ人」のほうがなんとなくすごいと思いますよね?
なぜなら、宝くじの1億円は一時的な結果に過ぎませんが、仕事で1億円稼いだ場合、その人の能力が高いことが考えられるからです。
宝くじの1億円は、その人そのものがすごいわけではない可能性があるからです。運が良かっただけと言われればそれまでですし、もしかしたら既に何千万円も投資している可能性だってあります。
結果そのものは良い時もあれば悪い時もあります。私たちが本当に褒めて欲しいのは自分自身です。結果を通じて自分自身を褒めて欲しいと思っています。それを心理学では承認欲求と言います。
「テストで良い点をとったこと」「契約をとったこと」はあくまで一時的な結果でしかありません。
もちろんその結果を褒めることは大事ですが、さらに「やっぱり頭が良い」「信頼される」といった部分を褒めてあげましょう。
「その人がすごいからすごい結果が出た」というメッセージを伝えてあげることが大切です。
3. 具体的に褒める
褒められると、もっとやりたくなります。
褒めることは、部下や子供の、思考回路を強化する効果があるのです。その時、具体的な行動を褒めた方がより高い強化が行われると考えられています。
例えば、「がんばったね!」これだけでも悪くはないのですが、具体性に欠けます。仕事、勉強だけでなく、スポーツも家事も部屋の掃除もゲームも何でも「がんばる」ということは共通しているからです。
例えば子供の英語の成績が良かったら「英語のセンスがあるね!」社会の成績が良かったら「記憶力がいいね!」など、子供のどういうところが良いのかを褒めましょう。
4. 失敗した時こそ褒める
良い結果が出た時に褒めるのは簡単です。でも、悪い結果が出た時にちゃんと褒めてあげられるかどうかが、親や上司としての本当の「褒めるスキル」です。
もともと人間は本能的に成功の記憶よりも失敗の記憶のほうが強く脳に刻まれる仕組みになっています。原始時代は生存のためには「死なない」ことが最も重要だったからです。
自然の世界では、危ない場所には近づかない、危険な動物からは逃げる、というのが生存のために最も優先順位が高いわけです。
だから、子供を勉強嫌い、部下を仕事嫌いにさせるのは簡単です。
子供がテストで悪い点を取ったとき、本人でも失敗だということは分かっているわけです。そこで「お前は本当にバカだな」とったその人そのものを否定する言葉を言ってしまうと、ただでさえ強力な失敗の記憶がさらに増幅されてしまいます。
「バカだ」と言われて頭がよくなる子はいませんし、「無能だ」と言われて仕事ができるようになる人もいません。
その結果「危険な場所には近づかない」=「勉強自体をしない」「仕事をしない」ようになってしまいます。
かといって失敗しても何も言わない、何も気にかけないのは、ただの無関心です。
じゃあ、失敗したとき、結果が悪かった時にどうすればいいのか?
ポイントは「視野を広げる」ことです。
「確かに今回のテストは悪かったね。でも○○は元が頭が良いから、だんだん成績も上がってくると思うよ。」
「確かに今は仕事がうまくいっているとは言えない。だけど○○は優秀だから、いずれ大成功すると思うよ。」
この例から分かるように、失敗した後に褒める場合は、2つのステップがあります。
ステップ1は、失敗を『限定』することです。この例では「今回は」「今は」という言葉を使って、時間軸を限定しています。
ステップ2は、より大きな視点から褒めることです。「○○は頭が良い」「○○は優秀」という言い方で、視点を今回の結果からその人そのものへ広げています。同時に未来へ時間軸を広げたうえで、褒めています。
まずは失敗を限定すること、その人そのものに対して『OK』を出してあげることが大切です。
■反省改善は冷静になってから
よく反省する、改善すると言いますが、失敗の直後には反省も改善もできません。冷静ではないからです。
失敗時の対応というのは災害時の対応に似ています。
火事が起こったとき、最初に行うのは消火、隔離、避難という、被害を最小限に抑えるための作業です。そして、火事が完全に収まってから復興作業を行いますよね。
反省、改善というのは、復興作業のようなものです。もちろん、復興によって都市がより便利になるように、反省、改善することで失敗を後の成功に変えることもできますが、失敗した直後はまだ火事が止まっていないのです。
失敗した直後に「何が悪かったのか?」「これからどうすべきか?」という思考を強いるのは、まだ火事が収まっていないうちから復興作業を行うようなものです。
実際に、失敗の直後に考えた反省、改善案はだいたい極端なものになります。「心を入れ替えて勉強する」「これをバネに営業でトップになります」のようになってしまいます。
そして実行されません。実行できないこと自体も失敗になるので、悪循環です。
反省、改善は本人が完全に冷静になってから行いましょう。人にもよりますが、大人なら数時間後~翌日以降、子供なら数日空けたほうが良いこともあります。
もちろん反省も改善も、やるのは本人です。親や上司が出来るのは、手伝ってあげたりきっかけを与えることです。
5. プロセスを褒める
結果を褒めるのは誰でもできます。東大に合格すれば、3秒前に知り合った人からでも「すごいね!」と言ってもらえます。
でも東大合格までのプロセスは親や上司など、本人をよく知っている人でしか分かりません。
だからこそプロセスを褒めることが大切です。
プロセスを褒めると言ったとき、よく誤解されているのが、途中の結果を褒めることです。
「東大には不合格だったけど、途中の模試では良い成績だった。だから実力はあるんだよ」というのは途中の結果を褒めているだけです。結果を基準にしか評価していません。
プロセスを褒めるというのは
・隣で家族がテレビを見ているのに勉強していた⇒集中力がある
・毎朝6時に起きて勉強していた⇒自己コントロールができる
・もともと特別に成績が良くなかったのに東大を目指した⇒チャレンジ精神がある
といったように、結果とは直接関係しないところを評価してあげることです。
結果が大事か?プロセスが大事か?と考えること自体が間違っていて、「プロセスが良くても結果が悪ければ意味がない」というのは、単純に「途中の結果」をプロセスとごっちゃにしているのです。
結果もプロセスも両方とも大事です。
ただし、上記の例でも分かるように、プロセスを評価するためには、エピソードが必要です。何も知らない他人にはできないことですし、親や上司も本人をよく観察していないとプロセスは評価できません。
プロセスを評価する人は本人の側にいる人にしかできないからこそ、親や上司はプロセスを評価し、褒めるべき所を見つけ、褒めてあげることが子供や部下を伸ばすために大切になります。
6. 何度でも褒める
褒めることの効果は、勉強や仕事と好き、楽しいという感情を結びつけてあげることです。
一度筋トレしただけで筋肉が付かないのと同じで、「勉強が好き」「仕事が好き」という回路ができるわけではありません。
勉強が好きな人、仕事が好きな人は、ある時突然やる気を出すわけではなく、人生の中で何度も何度も繰り返し、勉強や仕事をすることで褒められる経験を繰り返しています。
テストで100点をとった子供を褒めるのは簡単です。だから勉強ができる子は自然と勉強が好きになります。好きこそものの上手なれ、といいますが、上手こそものの好きなれ、とも言えるのです。
それほど際だった結果が出ていない子供や部下に対して褒められるかどうかが親や上司の力の見せ所です。
テストで100点を取れば、学校の先生も褒めてくれますし、友達にも尊敬されます。親が褒めなくても、他の人が褒めてくれます。
だから、もともと成績の良い子が良い大学に合格しても、もともと優秀な部下が業績を上げても、それは「勝手に伸びた」だけで親や上司が「伸ばした」わけではないのです。
でもテストで30点だった時、親の他にその子を褒めてあげられる人はいません。だからこそ、親はその子を褒めてあげないといけないのです。
その時こそ必要になるのが、褒めるスキルです。
その人そのものを褒めたり、プロセスを評価してあげることで、誰の目にも分かる結果が出ていなくても褒めてあげることができます。
もちろん褒めるスキルは子供や部下だけでなく、恋人、友人、そして自分自身に対してもそのまま使えます。ぜひ活用してくださいね^^